細菌検査部門
感染症を引き起こす原因として細菌と呼ばれるものがありますが肉眼で見ることはできません。顕微鏡を使って1000倍に拡大してようやく見ることができる小さな生物です。
体の中には多くの細菌(常在菌)がいます。これらの常在菌によって、私たちは病原性のある細菌が外から侵入定着しないように守られています。しかし外からの有害な細菌の侵入に伴い、正常細菌叢のバランスが崩れる事によって感染症となり、発熱や腫脹などの症状が引き起こされます。
細菌検査室では、患者さまから採取された色々な材料(尿、血液、たんなど)の中に感染症を起こしている原因となる細菌を見つけ、どの薬剤を使用して治療が可能かを検査しています。またインフルエンザウイルスやコロナウイルスなどのウイルス検査も積極的に取り入れ、迅速に結果が報告できるようにしています。院内感染防止対策として日本臨床微生物学会から認定された認定臨床微生物検査技師、感染制御認定臨床微生物検査技師(ICMT)を中心とし、MRSAやCREなどと呼ばれる薬剤耐性菌に注意を払い、病院内の感染管理に役立つ情報をいち早く提供しています。
検査材料の採取
細菌検査では症状により色々なものが検査材料になります。
- 呼吸器感染症の疑いがある時 → たん
- 膀胱炎などの尿路感染症 → 尿
- 下痢・腹痛などの消化器症状 → 糞便
- けがなどの擦過傷がある時 → 膿
塗抹検査(顕微鏡検査)
尿やたんなどの検査材料をスライドグラスと呼ばれるガラスの板に塗り、菌を青や赤色に染めるグラム染色を行い、顕微鏡で観察します。検査材料中の細菌の有無や菌量がわかり、推定できる菌種や原因菌として判断できるかなど情報を報告します。
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顕微鏡で見た細菌(x1000)
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顕微鏡で見た細菌(x1000)
培養検査
多種多様な検査材料(尿・たん等々)に応じて、寒天培地と呼ばれる栄養調整された寒天に塗り広げていきます。18~24時間35℃の適温で培養すると培地の表面にコロニーと呼ばれる菌の塊が発育します。
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同定検査
培養したコロニーを用いて、感染症を引き起こしていると考えられる細菌の同定(菌の名前)を分析器で決定します。
薬剤感受性試験
培養したコロニーを用いて、感染症を引き起こす病原菌に対してどの薬剤が効くのかを調べます。
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抗酸菌検査
結核菌に代表される抗酸菌は一般細菌に比べ発育が非常に遅いため、菌名がわかるまでに数週間~数か月かかります。当院では蛍光顕微鏡検査法や、発育の早い液体培地法、結核菌はLAMP法と呼ばれる遺伝子検査を導入し、迅速な結果報告を行っています。
遺伝子検査
O-157など出血性大腸菌のベロ毒素や寒天培地に発育しにくい菌、新型コロナウイルスなどはリアルタイムPCR法やLAMP法を用いて検査を行います。
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迅速検査
迅速性を求められる病原体にはキットを用いて検査を実施しています。
報告まで15~60分程度です。
当院で行っている迅速検査は以下の項目です。
- インフルエンザ抗原 (タウンズ)
- 便ノロウイルス抗原 (タウンズ)
- 便ロタウイルス/便アデノウイルス抗原 (ミズホメディー)
- マイコプラズマ抗原 (Smart Gene:ミズホメディー)
- 咽頭アデノウイルス抗原 (タウンズ)
- RSウイルス抗原 (タウンズ)
- A群溶血レンサ球菌抗原 (タウンズ)
- 尿中肺炎球菌莢膜抗原 (アボット)
- 尿中レジオネラ抗原 (極東製薬)
- C. difficile 抗原(GDH)/トキシン検査 (島津ダイアグノスティクス)