禁煙外来
禁煙外来の適応は、喫煙している方で、すぐに禁煙することを希望するが、ニコチン依存症のために禁煙できない方です。
保険診療ができる条件は以下の4つです。
- ニコチン依存症に係わるスクリーニングテスト(TDS)でニコチン依存症と診断(TDS 5点以上、下表参照)
- ブリンマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)200以上
- 直ちに禁煙することを希望
- 「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、治療を受けることを文書にて同意する。
禁煙外来の流れ
禁煙外来は、初診時を入れて合計5回(12週間)の診療を行います。診療は、主に問診と簡単なカウンセリングです。最後の5回目まで受診した患者さまと、途中でやめてしまった患者さまの禁煙成功率は10倍も達うことがわかっていますので、最後まで受診することを強くお勧めしています。尚、患者さまが支払われる金額ですが、最後の5回目まで受診をされ、保険診療3割負担の方の場合、禁煙補助薬の代金を含めた診療費は概ね2万円弱となり、1日20本の喫煙者の場合には1.5カ月分のタバコ代に相当することになります。
お知らせ
現在お知らせはございません。
特色
ニコチン依存症に係わるスクリーニングテスト(TDS)
下記の質問を読んで、自分にあてはまる項目が5個以上ある方は、ニコチン依存症と診断できます。
- 1. 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか。
- 2. 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか。
- 3. 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか。
- 4. 禁煙したり本数を減らしたときに,次のどれかがありましたか。
(イライラ、神経質、落ちつかない,集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加) - 5. (4)でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか。
- 6. 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。
- 7. タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。
- 8. タバコのために自分に精神的問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。
- 9. 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか。
- 10. タバコが吸えないような仕事や付き合いをを避けることが何度かありましたか。
ニコチン依存症とは
喫煙に伴って摂取されたニコチンは、数秒で脳内に達し、脳内のに性アセチルコリン受容体(α4β2ニコチン受容体)に結合し、ドパミンを中心とした脳内伝達物質の分泌を促します。依存症に関係する脳内部位は、中脳の腹側被蓋野から大脳辺縁系の側坐核に投射するドパミンニューロン群であり、脳内報酬回路を形成しています。喫煙に伴い、喫煙者は快楽、快感、覚醒、緊張の緩和(ホッとする、落ち着くなど)などの症状(喫煙による報酬)を自覚します。
しかし、一旦禁煙をすると、イライラ、落ち着きのなさ、欲求不満、集中困難タバコへの渇望、倦怠感、怒り、不安、睡眠異常、食欲増加などの様々な離脱症状(ニコチン離脱症状)が出現し、禁煙が困難になります。
このようなニコチンという薬物に対する身体的依存のほがに、ニコチン離脱症状という不快な症状が喫煙によって回復したという経験、喫煙者白身の成育環境等を介し、「タバコは人生になくてはならないもの」「fストレスから解放させてくれるもの」、「気分転換になるもの」といった(時にはその強固さから「信仰」とも思えるほど強い)認知が生じ、心理的依存といわれます。
さらに長年にわたるくせや習慣といったものがあります。例えば、目覚め、食後、時間の空いたとき等に行なっていた喫煙です。
臨床的には、身体的依存、心理的依存、くせを総称し、ニコチン依存症と捉えます。診察室で禁煙を指示したとき、すぐに禁煙することができないと返答をする患者さまは、まずニコチン依存症です。
WHO国際疾病分類ICD(ICD-10)では、タバコを少なくとも1ヵ月間持続して反復使用し次の基準(以下に簡便にして記す)のうち3項目を満たすこと、とあります。
- 喫煙したいという強い欲望、切追感(切望感)。
- 禁煙しようとしたが、ついタバコを吸い始めたり、ずるずると何本が吸ってしまう。本数を減らそうとしても思うように減らせない(強迫的使用)。
- 喫煙を減らしたり、やめたりしたときの身体離脱症状の出現。離脱症状を和らげたり、回避するために喫煙していることか明らかである。
- 当初考えていたよりも多くの量を長期間喫煙している。望むだけの効果を得る量が以前よりも増える。当初の量では効果が得られにくい(耐性の亢進)。
- 喫煙のことで頭がいっぱいになる。喫煙を優先するために社会的活動に支障がでる。(仕事の中断・喫煙できない会社をやめる等)。
- 喫煙の有害性が明白であると気付いていても、喫煙を継続する。
喫煙者の70%はニコチン依存症です。一方、喫煙者の70~90%はタバコをやめたいと考えています。禁煙補助薬の登場によりニコチン依存症は、ほぼ治癒できる疾患となりました。
禁煙補助薬バレニクリン(チャンピックス®)について
バレニクリンはニコチンより高い親和性で、脳内のニコチン受容体に結合し、作動薬と拮抗薬という2つの特懲を発現する内服薬です。バレニクリンは、作動薬としてニコチン受容体を部分的に刺激し、少量のドパミンを放出させることで、禁煙に伴う離脱症状を軽減します。同時に拮抗薬として、ニコチンそのものがニコチン受容体に結合するのを阻害するため、喫煙してもタバコがおいしくなくなるという特徴があります。
バレニクリンは禁煙に対して3.2倍有効というメタ解析の結果がでています。1年後の禁煙効果は、ニコチン製剤の場合より1.3倍有効です。バレニクリンには脳血管障害や心臓疾患の禁忌はありません。副作用として吐き気や頭痛か多いですが、異常な夢、不眠、うつ、めまい、傾眠などの精神神経系の副作用の発生が報告されています。
禁煙に旦成功した方のフォロー(維特期)
禁煙ステージには、(1)無関心期、(2)関心期、(3)準備期、(4)実行期、(5)維益期の5つのステージがああります。わざわざ維持期が設定されているは、喫煙(ニコチン依存症)が「再発しやすい慢性疾患」であるからです。禁煙外乗の事後調査によると、一旦禁煙できた患著様でも、1年後は約5割の方に喫煙再開がみられると言われています。
禁煙を希望される患者さまがスムーズに喫煙を卒業してもらえるよう、私たちも頑張ってまいります。熊本労災病院禁煙外来をどうぞよろしくお願い申し上げます。