血管外来
血管外来は心臓血管外科と循環器内科が一緒になり、大血管と末梢血管に対する新たな治療を組織的に協力して取り組み、患者さまにより安心していただける新しく侵襲の少ない治療を提供しようとするものです。
動脈硬化性疾患は高齢化とともに増え、また、複雑化してきております。その中で患者さまのニーズに合った治療、より侵襲の少ない治療に対応するため、外科的治療と内科的治療を組み合わせた治療が可能な血管外来を開設しております。
血管内治療は毎年増加しておりますが、外科的治療との双方を組み合わせたハイブリット手術も行っております。
お知らせ
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特色
動脈硬化性疾患の現状
我が国においては食生活や生活習慣の欧米化などを背景として、動脈硬化の危険因子である高血圧や高脂血症、糖尿病などを有する成人の割合は増加の一途をたどっており、動脈硬化性疾患の新規発症の低年齢化が問題となっています。その一方で高齢化も着実に進んできており、高齢者における動脈硬化性疾患の増加も無視できない状況となっています。したがって成人のあらゆる年齢層に対し動脈硬化性疾患の予防および治療に介入していくことが今後より一層重要となってきていると思われます。
これまで循環器内科医にとって、対象となる主要な動脈硬化性疾患といえば狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患でした。ところが他の動脈硬化性疾患の併発や重症化(例えば脳梗塞や腎硬化症による腎機能低下、重症下肢虚血など)を来たして、予後やQOLが損なわれる例も稀ではありませんでした。また脳血管疾患や末梢動脈硬化性疾患患者において冠動脈病変の合併率が非常に高いことも事実であります。特に末梢動脈疾患患者での一番の間題点は、5年後には約30~35%の方が心血管合併症を発症され、そのうち約3分の1が死亡されているという驚くべきデータが出ている点にあります。
従って我々循環器内科医に課せられた今後の役割とは、動脈硬化性疾患が疑われる患者においては、常に全身の血管の評価を行い、冠動脈のみならず予後やQOLを損ない得るような全身の血管病変に対しては適切な治療を行っていくことであると考えます。
末梢血管疾患に対する治療
以上のような経緯から、近年循環器内科医の中では末梢動脈疾愚に対しても積極的に治療に介入していこうという意識が非常に高まってきています。その一つの手段が末梢動脈カテーテルインターベンション(以下EVT)であり、当科においても平成16年より導入を図り、年々着実に症例数が増加してきています。
EVTのターゲットとなる部位は様々であり、下肢においては腸骨動脈・浅大腿動脈領域を主として、最近では重症下肢虚血患者の救肢目的で膝下の動脈に対しても血行再建を行うようになってきました。また動脈硬化性疾患患者で度々認める難治性高血圧や進行性腎機能障害の原因の一つとされる腎動脈狭窄症に対しても、ステント留置などを行うことによって高血圧の改蒡や腎機能障害の進行の抑制を図るなどしています。ただし状況によっては、必ずしもEVTがいいというわけではなく、心臓血管外科こよるバイパス術の方が明らかにいい場合もあり、患者さま個々の状況に合わせた適切な治療が行えるようしっがりと対応していきたいと考えています。
全身の血管を集学的に評価・治療していくために様々な科と連携しあう
今後我々は一つの臓器の動脈硬化性疾患のみにとらわれることなく、全身の血管の評価・治療を十分に行っていく必要があります。例えば狭心症患者で内頚動脈狭窄症や下肢動脈狭窄症、腹部大動脈瘤などの動脈硬化性疾患を合併している方に遭遇することも稀ではありません。その結果患者一人に対する治療方針の決定に脳神経内科医、脳神経外科医、循環器内科医、血管外科医など様々な科が関わることとなります。さらにこの患者が糖尿病を合併していれぱ糖尿病内科医と、下肢虚血による足趾潰瘍・壊死なども認めれば、皮膚科や形成外科、整形外科などとの運携も必要となってきます。つまり動脈硬化性疾患患者においては、その合併する疾患や病状が多妓に渡っている可能性が十分あるため、様々な科同士のス厶一スな連携・意思疎通が必要不可欠と言えます。これまでも各科同士でできうる限り十分な連携を図っていこうとお互いに努めてはいましたが、今後はより一層患者の状況に合わせて効果的かつ効率的な治療を行っていくべきであると考えます。
そこで血管外来が核となって、動脈硬化性疾患患者一人一人の評価・治療を他科との連携を図りながらマネージメントしていくことが我々の使命の一つと考えています。
スタッフ紹介
土井 英樹
- 役職
- 血管内科部長、循環器内科部長
原 正彦
- 役職
- 血管外科部長