熊本労災病院

院長挨拶

 皆様、こんにちは。熊本労災病院の病院長を務めております松岡雅雄です。

 人口減少、少子高齢化により医療体制も大きな変化を求められています。乳がんは増加の一途を辿っており、女性の癌では最も多く今後9人に一人が罹患すると予想されています。乳がんは早期発見し、治療すれば多くの方で完治が可能です。熊本労災病院は、地域の皆様のニーズにお応えするため、最新鋭の設備と高度な医療技術を備えた「乳腺センター」を開設いたしました。乳がんは早期発見・早期治療が極めて重要です。当センターでは、専門性の高い医師、看護師、技師がチームとなり、患者様一人ひとりに寄り添った、より質の高い医療を提供してまいります。

 また、超高齢化社会を迎える日本において、病院完結型の医療から、地域全体で医療・介護を支え合う体制の構築が求められています。当院では、地域の医療機関との連携を強化し、スムーズな診療情報共有、患者様の状態に応じた適切な医療機関への紹介など、病診連携を積極的に推進してまいります。さらに、地域の皆様の健康寿命延伸にも積極的に取り組んでまいります。病気の予防や早期発見のための健康診断、生活習慣病予防のための健康教室など、様々なプログラムを通じて、地域の皆様の健康年齢の改善に貢献してまいります。

 ニュース等では少子高齢化、人口減少の話題が多く、どうしても閉塞した気分となりますが、今回は世界がとても良くなったという話をしたいと思います。「ファクトフルネス」という本があり、世界は悪くなっているという思い込みを指摘しています。日本では明治時代に40才後半であった平均寿命は現在、男性81才、女性87才まで延びています。世界において極度の貧困率は1800年の85%から2017年は9%まで低下しています。世界での識字率は1800年が10%だったものが2016年には86%へと増加しています。自動車の安全装置により自動車事故は減少し、癌の5年生存率は現在60%を超えています。このように世界は色々な面で良くなっており、今後さらに大きな変化が訪れようとしています。医療でも生成AIの導入、プレシジョンメディシンの発展、新規治療法、薬剤の開発により更に治療成績が向上していくことが予想されます。

 熊本労災病院でも今年度中に国産手術支援ロボット「hinotori」(ヒノトリ)を導入し負担の少ない手術が始まります。また乳がん治療では早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法を開始いたします。乳房を切除せずに、外見を保ちながら乳がんを治療できる画期的な方法であり、熊本県では熊本大学病院に続いて承認されました。さらに経皮的左心耳閉鎖術(Watchman)にも成功し、地域の皆様へ最新の医療を提供することが可能となっています。この治療も済生会熊本病院、熊大病院に続き3施設目です。このように熊本労災病院では熊本県でもトップレベルの医療を提供しています。

 熊本労災病院は、これからも地域の皆様にとって、安心・安全で質の高い医療を提供できるよう、職員一同、日々研鑽を重ねてまいります。今後とも、当院へのご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

令和6年11月27日

松岡雅雄
熊本労災病院 院長 松岡 雅雄

松岡 雅雄

略歴
昭和57年3月
熊本大学医学部卒業
昭和57年4月
熊本大学医学部附属病院
昭和63年3月
熊本大学大学院医学研究科卒業
昭和63年6月
カリフォルニア大学バークレー校
平成4年7月
熊本大学医学部附属病院助手
平成10年5月
熊本大学医学部附属病院講師
平成11年4月
京都大学ウイルス研究所附属エイズ研究施設教授
平成18年4月
ウイルス研究所副所長
平成22年4月
ウイルス研究所所長
平成26年4月
ウイルス研究所附属ヒトレトロウイルス研究施設長
平成28年7月
熊本大学大学院生命科学研究部教授
京都大学ウイルス・再生医科学研究所客員教授
平成30年4月
熊本大学医学部附属病院がんセンター長(併任)、治験支援センター長(併任)
平成31年4月
熊本大学病院輸血・細胞治療部部長(併任)
熊本大学大学院生命科学研究部副部長(併任)
平成31年10月
熊本大学病院副病院長(併任)
令和2年4月
熊本大学病院中央検査部長(併任)
京都大学名誉教授
令和5年4月
熊本大学シニア教授
令和6年4月
熊本労災病院 院長